10年ほど前、私が武蔵野赤十字病院の小児科に勤務していた時に、
当時中学生だった、その男の子は「足の痛み」を訴えて受診されました。
たまたまその日の午後の救急外来担当だった私は、その子を診察することになりました。
色々な検査の結果、非常に重い、場合によっては命にかかわるような病気であることが判明しました。
ある程度診断が絞られた後は、その分野の専門の先生にお願いし、私もその後勤務地が変わったため、その後の詳しい経過は知りませんでした。
10年が経過したある日、近隣の先生のところへ開院のご挨拶にうかがった折、受付の方から「道下先生ですよね。」と声をかけて頂きました。その方は、あの時の男の子のお母さまでした。
「うちの息子は、先生に救っていただきました。」
そういって、お母さまは非常に感謝してくださいました。
もちろん、私が一人で病気を見つけたわけではなく、当時一緒に仕事をしていた先輩の先生方と
相談の上で検査等を進めていたはずなので、私はたまたま最初にそこにいた小児科医であるに
すぎません。
ただ、その後、ご本人とともに壮絶な闘病生活を経験されたに違いないお母様が、
治療に携わった小児科医の一人として私のことを覚えていてくださっていた、ということは、
小児科医としてはこの上なく光栄なことであり、うれしいことです。
9月3日(土)の診療時間終了間際に、彼はお母さんと一緒に、開院祝いの素敵なお花をクリニックに届けてくれました。
お花をくれたスーツを着た男性は、私の記憶にうっすら残っていた中学生の男の子の面影からは
想像できないほど、立派な好青年になっていました。
現在、就職へむけた活動の真っ最中とのことで、話を聞いていても夢心地の感覚でした。
開業準備の疲れが一気に吹き飛んだ、素敵な一日となりました。